富士山を望む地方の小さな町にある、冨士ケ丘高校。演劇部の高橋さおり(百田夏菜子)は次期部長に任命され、3年生になった。高校演劇コンクールの地区大会突破を目標にしていたが、かつて「大学演劇の女王」と呼ばれていた新任美術教師、吉岡(黒木華)の指導の下、全国を目指すことに。原作は平田オリザの同名小説。監督は本広克行。主演がアイドルグループのももいろクローバーZが務める(主な部員の高橋さおり(百田夏菜子)、橋爪裕子(玉井詩織)、西条美紀(髙木れに)、中西悦子(有安杏果)、加藤明美(佐々木彩夏))。
 原作が面白かったので、アイドル映画なのかな、だったら自分門外漢だなと思いつつ見に行ってみたのだが、予想外にさわやかで清々しい青春映画だった。題名の出てくるタイミングがまさに!って感じだ。舞台の幕というだけでなく、彼女たちの人生で次のステージの幕が上がるぞ!という眩しさに満ちている。ただそれだけに、すぐに楽曲を被せてしまうのはもったいなかったが・・・。
 原作の基本的なラインは押さえているが、2時間という尺と、ももクロを起用するというところに合わせたアレンジはしてある。ストーリーラインだけでなく、演じる人に寄せて個々の登場人物の設定をしているのだと思う。原作と最もキャラクターが違うのは中西(原作では天才肌の演劇部員、映画では周囲についていけずに退部、転校した元部員)なのだが、これは変えて正解だったなと思う。ストーリー上も、皆で一緒に頑張る!というスポ根的な側面が強くなっているので、「そこそこ」レベルの人材にとどめておいた方がいいという判断だったのかな。また、男子部員はいない設定になっていたが(原作ではいる)、これは勿体なかったと思う。男女混合の方がやりとりにバリエーションが出て面白いと思うので。今のアイドル映画は、恋愛要素入れると受けがよくないのかな?
 おそらく順撮りしていると思うのだが、ももクロのメンバーの演技がどんどん良くなっていく。最初は、大分練習はしたんだろうがどうも心もとない、見ていてもぞもぞしちゃうものだったのだが、終盤は登場人物と演技がちゃんと噛み合っていている。表情も体も使った演技になっていて、その変化の仕方が面白かった。よく頑張っているなぁという印象。
 ただ、だからこそ残念な部分も多い。高橋の心情を説明するのにモノローグを多用しているのだが、これはさすがに被せすぎだろう・・・と興ざめしてしまった。特に前半は、ここまで説明しないとだめなの?ってほど。百田の演技が悪くないだけに、ここまで言葉で説明しちゃったら却って俳優に失礼だろう。製作側が、なんだかわからないけどすごく心配性になってるんじゃないかなという印象を受けた。映画を見る側のことも信用してほしい。また、芸能人のカメオ出演や小ネタの数々がうるさいのも残念。小細工しなくてもいい映画だと思うんだけど。