レイ・ヴクサヴィッチ著、岸本佐知子・市田泉訳
皮膚が宇宙服化していく病が蔓延する世界、自転車を「狩る」子供たち、手編みのセーターの中で迷子、寄生生物に乗っ取られた母親等、奇妙な設定が次々と現れる、ユーモラスでどこか悲哀漂う短編集。33編を収録しており、どれもごくごく短く読みやすい。が、描かれている世界は奇妙奇天烈だ。2001年度のフィリップ・K・ディック賞候補になったそうだが、SFというには不条理ギャグ的すぎる気もする。ただ、へんてこな話ばかりだが、どれもどこかしら哀愁が漂っている。表出の仕方は変なのだが、愛する人、親しい人、あるいは自分が属する世界そのものとコミュニケーションが取れなくなってしまう、他者との間に厚い壁が落っこちてくるようなシチュエーションが多発しているのだ。笑えるけど笑えない。人と人との関係への諦念が滲む。そんな中に、表題作のような話があると(つかの間の夢だとしても)妙にホロリとする。全体のバランスのいい短篇集だと思う。