実在するイギリスの富豪、ポール・レイモンドの半生を映画化した作品。ショークラブの経営者ポール(スティーブ・クーガン)は新手のヌードショーを次々公演し、スキャンダルを追い風にどんどんのし上がる。やがてグラビア雑誌を発行するようになり、巨額の富を手に入れる。監督はマイケル・ウィンターボトム。
 ウィンターボトム監督、クーガン主演、実話ネタということで『24hour party people』と同系列と言って言いだろう。ウィンターボトムにとってクーガンは、実録ネタ専用俳優になっているのだろうか。誰にでもなれるような曖昧さをはらんでいるところがいいんだろうな。
 ポールがスキャンダルと共にのし上がっていく過程を描いているが、能天気な前半から一転し、後半はどこか「おかしくてやがて哀しき」な雰囲気になってくる。これは、ポールと娘との関係が大きな要素になってくるからだろう。ポールは娘のことを愛しているし、娘も父親であるポールのことを愛している。しかし、愛しているイコールいい父親であるということにはならないのだ。
 ポールは娘の望みをかなえ、経済的には何不自由ない暮らしをさせ、彼女にできるだけの資産を残そうとする。しかし、その資産によって彼女が幸せになったかどうかというと、微妙なところだ。確かに何でも買ってくれるしパーティでは一緒に盛り上がってくれるしで、楽しい父親ではある。しかし、ドラッグをやろうとしている娘に対して、「それはクズ製品だから使うな、やるなら一級品にしろ」とアドバイスする姿には、そこかよ!と思わず突っ込みたくなった。彼は一貫して、娘を諌めるということができないのだ。
 ポールは見た目も精神も若々しいし、自身も若い気でいて遊び好き。楽しいこと、華やかなことが好きだし、スキャンダルを積極的に踏み台にしていく図太さがある。一緒に遊ぶ「親しいおじさん」としては愉快だろうが、自分の父親がいつまでたってもこういう人だと、(いくら 裕福だとは言え)子供としては複雑なものがあるのではないだろうか。ポールは娘を愛しているが、父親として同どう舞うべきなのか、父親という役割にはどう いう責任が伴うのか、最後までよくわからなかったのではないかと思う。元妻があるシーンで孫の父親に、厳しくしつけなさい、と言うのだが、これが(ポールに対するあてつけでもあるかもしれないが)重かった。
 当時のファッションや風俗、流行っていた音楽などがふんだんに盛り込まれていて(当時を象徴する楽曲のチョイスはものすごくベタなのだが、そこがいい)、雰囲気も楽しめた。