介護ヘルパーの山岸サワ(安藤サクラ)は、訪問先の家族からある頼まれごとをされたことがきっかけで失職。寮住まいだった為に住処もなくしてしまう。カラオケボックスで店員と押し問答していた年配男性を見かけたサワは、無理やり便乗して一晩乗り切る。これをきっかけに、押しかけヘルパーとして転々としていくことに。監督は安藤桃子。
 アバン部分が長く、加えて1ショットがやたらと長い。ここでショットを切り替えたら気持ちがいいだろうなぁと思ったところをことごとくスルーしていくのだが、これはあえてなのだろうか。音楽と画面内の動きが合っていないところも気持ち悪いのだが、多分あえてなんだろうな・・・。
 しかし、映画タイトルが出た後は、安藤サクラの身体の説得力(優雅でも美しくもないがやたらと「そこにある」感じ)もあいまって、引き込まれた。サワのやっていることは年配男性の弱みにずけずけと付け込んでいく、恐喝まがいの行為なのだが、その強引さと男性たちのおたおた感とのコントラストでつい笑ってしまう。特に元自動車整備士の茂(坂田利夫)のパートは、ファンタジー要素も含んだコメディとして楽しかった。2人の距離が徐々に縮まり、一方的ではない関係性が出来ていく過程がいい。双方から与えあっている、と言う感じがするのだ。
 ただ、その後の元教師の真壁(津川雅彦)のパート以降は、監督が何をやりたいのか混乱しているように見えた。真壁の一方的な「演説」の内容は取ってつけたようで、作品全体からは浮いているし、監督がこの演説に対して切実感を持って相対しているようにも思えない。これをやりたいなら、ここに至るまでの設計がもっと別のものじゃないとならないんじゃないかなー。また、その後の佐々木健(柄本明)のパートも、それぞれ別の映画の一部のように見えた。
 何より、真壁パートではサワと年配男性らとの関係の性的なニュアンスが、ちょっと私が苦手な方向に強くて辟易しそうになった。おじいちゃんの為のドリーム映画みたいな変なサービス精神を感じてしまって・・・。茂パートでそれを感じなかったのは、一重に坂田の稀有なキャラクターによるものだと思う。