問題を抱える子供の為のグループホーム「ショートターム12」。職員グレイス(ブリー・ラーソン)は同僚のメイソン(ジョン・ギャラガー・Jr)と付き合っていたが、妊娠したことに気づく。一方、新しく入所してきたジェイデン(ケイトリン・デヴァー)との対応にも手を焼いていた。監督・脚本はデスティン・ダニエル・クレットン。
 冒頭とラストが反復されているが、その意味合いが全然違う。似ているようでも、その場にいる人たち個々は確実に変化・成長しているのだ。そこが本作の後味を明るいものにしている。メイソンの小噺の信憑性にひやっとするが、皆の表情を見ていると、その小噺がフィクションであったとしても、実際に起こった出来事も「いい話」だったんじゃないかなと思えるのだ。
 ホームの職員がどういう仕事をしているのか、ホームと入所者がどういうふうに管理されているのか、ということが一連の流れから垣間見えるのだが、これが面白かった。所持品にしろ建物への出入りにしろ、かなり厳密に管理、チェックされている。入所の際に刃物類は没収されるし、定期的に個室のチェックされる。一見、高圧的ではあるのだが、子供の意志を尊重していないというわけではなく、多分こういうやり方でないと成立しない「保護」なのだ。グレイスたちが新任職員に「(子供に)舐められるな」と言うのも、子供を保護するには、時に対決しなくてはならないからだろう。彼らは子供たちにとって信頼できる存在であろうとしているし、ある程度の親密さを作ろうとしている。しかしそれは、「仕事」としての信頼、親密さなのだと思う。その一線がはっきりとひかれているところが、大人、プロの態度だなと思った。
 グレイスはジェイディンにシンパシーを感じているようで、他の子に対してよりも入れ込む。ジェイディンの姿が過去の自分と重なるからだろう。その入れ込み方はホームの職員としては少々危険だ。実際、彼女はかなり危ういラインまで進んでしまう。しかし、ジェイディンはグレイスではないし、ジェイディンを救うこととグレイスの気持ちが救われることとはまた別の話だ。グレイスにしろ、ホーム出所を間近に控えた少年にしろ、不安でいっぱいになるのは、その肩代わり出来なさを痛感しているからだろう。そこで「大丈夫」と思えるかどうかで、その先が大きく左右されてしまう。
 きびきびとしたグレイスを支える、メイソンの人としての「感じの良さ」が際立っていた。周囲を落ち着かせる安定感がある。彼が実家にグレイスを連れて行くシーンがあるのだが、愛情いっぱいの家庭で育ったことが見て取れる。どういう家庭で育ったかがパーソナリティに与える影響ってやっぱり大きいんだろうなぁ・・・。ショートターム12に来る子供たちは、家庭に問題のある子が大半だろうから、メイソンの実家を見るとちょっと複雑な気分になった。これって運不運としか言いようがないよなと。