ジャン=パトリック・マンシェット著、中条省平訳
殺し屋のマルタン・テリエはある仕事を最後に引退を決意する。しかし組織の刺客や彼に恨みを持つ者が、彼を狙い始める。冷徹といっていいほどクールかつ、余計なものをそぎ落とした文体。翻訳の良さもあるのだろうが、ゴツゴツ、殺伐として読んでいる側に切りつけてくるようなスタイルだ。それがテリエの人としてどこか足りないような、偏った言動とマッチしている。はたから見ているとちょっと理屈がおかしいのだが、本人はいたって真面目だしこういうやり方しかできないという不器用さと、それゆえ訪れるラストがやるせない。それを突き放した文体で語っていくのでなおさらだ。