DEA(麻薬取締局)特殊部隊のリーダーであるジョン・ウォートン(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、8人の部下を率い、潜入捜査や襲撃等の危険な任務をこなしてきた伝説的捜査官。ある麻薬組織のアジトを壊滅させ資金を回収する任務につくが、資金は何者かに奪われ、チームは横領の疑いをかけられる。更に、何者かがチームの面々を1人ずつ殺害していく。監督はデビット・エアー。
 エアー監督の『エンド・オブ・ウォッチ』が滅法面白かったので本作も見てみたのだが、これもなかなか面白かった。シュワルツェネッガー主演というといわゆるスター映画をイメージしがちだが、本作はむしろ地味だし、シュワルツェネッガーが出てきても、えっこんなおじいちゃんになっちゃったの?!とびっくりするくらい最初は存在感が薄い。しかし、本作の場合はそこがむしろ味わいになっている。彼も(やたらめったら強いのは相変わらずだが)あくまでチームの1人であって、裏切ったのが誰かはわからない、というところがいいのだ。
 冷静に見ると結構乱暴な作りなのだが(連続殺人と金の行方に関しては突っ込みどころが多々あるだろう)、特に作中の時間の飛ばし方、ずらし方の手法が気になった。これは面白い点でもあるのだが、作中時間の経過をざっくり割愛したり、時間が連続しているように見せて実は別の日だったり、という仕掛け(というほどではないが)がされている。これによってスピード感が出ているのはいいのだが、ちょっと混乱した(笑)。ミスリードを誘うという点ではいいのかもしれない。
 題名(サボタージュ=破壊行為)の通り、シュワルツェネッガーとその仲間がばんばん破壊活動しまくるが、本作の根底に流れているものは爽快感ではなく、苦く、かつ狂気を帯びたものだ。ある人が実は死人みたいなもので、目的を遂げる為だけに生きている。そしてその目的を遂げる為に何を対価にしたか、というところに狂気が滲んでくるのだ。それが裏切り行為だとわかっている、でもやらずにいられない、というむちゃくちゃさがじわじわとくる。
 DEAのメンバーは一般社会からはともすると外れがちな人たちなのだが、連続殺人事件を捜査する警察官・キャロライン(オリビア・ウィリアムズ)は対称的に、まっとうに仕事をしようとしており、見ていてほっとする。彼女と相棒との軽口も、実際に仕事上の仲間ってこういう感じだよなという説得力があった。『エンド・オブ・ウォッチ』でも思ったけど、エアー監督は「同僚との会話」のニュアンスとか職場特有のジョークみたいなもののつかみ方が的確(というか警察ものが大好きなだけかもしれないけど・・・)だな。