さほど売れていないミュージシャンのマクシム(ヴァンサン・マケーニュ)は、パリから父親(ベルナール・メネズ)の住む実家に戻っていた。雑誌の取材がきっかけで、地元の若い女性メロディ(ソレーヌ・リゴ)と付き合い始め、ロマンスに心躍らせるが。監督はギョーム・ブラック。
 こ、これは辛い・・・とは言っても映画としてではなくて、マクシムの言動のイタさが。見る側にそう思わせるということは(真に迫ってるってことだろうから)、映画としては成功しているということなんだろうけど。ナイーブで人生に迷っている人が、若くて(それなりに)かわいい子といい感じになって舞い上がってしまっている姿には、あああ周囲見てー!微妙に彼女のテンションと食い違っているかもしれないからー!と叫びたくなる。そんな、見方によっては下世話・意地悪になってしまうシチュエーションだが、そっちには寄らない。マクシムは滑稽かもしれないが、彼に対する視線は下世話ではないので耐えられるのだ。グラック監督は『女っけなし』にしろ本作にしろ、かなり引いた目線で、批判じみたニュアンスは入れずに撮るので、不穏さが漂っても、それを主人公の「ボケ」として突っ込みを入れる余地が出てくるように思った。「ボケ」を体現しているようなマケーニュの佇まいも素晴らしいのだが。
 題名の通り、マクシムは「やさしい人」で、メロディはそこに惹かれたのだと思うが、やさしさこじらせて後半えらいことに・・・。そこまでやるか?!と突っ込んでしまった。愛が重いよ!それだけ彼にとっては切実な関係だったのだろうが、彼と彼女の間のディスコミニュケーションが際立って見えた。彼女が特別ひどい女というわけではないだけにより一層。彼女も(彼も)また、複雑さをもっと1人の人間なのだ。
 本作、主人公と女性との関係を描いているが、同時に、親子関係の描かれ方に味わいがあった。マクシムの父親は女好きで、若い恋人もいたらしいのだが、確かにこの人の方がマクシムよりもモテるだろうなぁという空気が醸し出されているのだ(笑)。服装もマクシムよりもシュっとした感じだし、女性に対する態度もてらいがないというか、ほどよくこなれている。こういう人が親だと、恋愛に奥手な子供はちょっと困っちゃうよな・・・。これは父親役のメネズの雰囲気の良さも大きかった。なお、犬が名演!