加藤陽子著
日本現代史の研究者である著者が、主に高校生を対象に行った戦争史講座をまとめたもの。日清戦争から太平洋戦争まで、日本はなぜ戦争への道を進んだのか、様々な観点から考えていく。大変評判になっていた1冊だが、確かに力作。私は歴史にはかなり疎いのだが、高校の教科書レベルの知識があれば特に問題なく読めるのではないかと思う。歴史好きな人にはもちろんお勧め。通り一遍の歴史の流れではなく、この時のこの選択に何が影響しており、誰が決定したのかというところを一つ一つ読み解いていく。日本にも世界にも優秀な頭脳があった、それがなぜ泥沼状態の戦争に陥ってしまったのか。(日本に限っていうと)局面を大きく読み間違えるというよりも、つい都合のいい方に考えてしまう、楽観視してしまうという小さい部分の積み重ねで破局にいたることも往々にしてあるんだなと。そして、世界情勢に詳しい知識人の中にも、戦争に賛成だった人がそこそこいたらしいというところは意外でもあった。この人はどこを見てこう考えたのか、という部分がちゃんと説明されており面白い。歴史に造詣の深い人には特に目新しい内容ではないのだろうが、私にとっては入門編として勉強になった。それにしても、本著でとりあげられている時代って学校の授業ではあまり分量割かれないし、本著のようなアプローチの仕方ってあまり目にしたことがないなぁ(私がこの分野に疎いからなんだけど)。もっと学校教育の中で取り上げていく必要がある内容だと思うのだが。