ブルックリンで親友ソフィーとルームシェアしているフランシス(グレタ・ガーヴィグ)。モダンダンサー志望だがいつまでたっても「研修生」のまま。彼氏との同居に乗り気になれず破局し、更にソフィーとの同居も解消となって八方ふさがりに。監督はノア・バームバック。脚本はバームバックとガーヴィグの共作。
 フランシスはいわゆる「ちゃんとした大人」というわけではない。社交的な場での空気は読めないし、定職があるとも言い難い(ダンスカンパニーには所属しているが、正団員ではないのでおそらく身分も収入も不安定)。ソフィーに「喧嘩ごっこしよう!」と誘う様は学生時代の気分をずっと引きずっているように見える。でも、実際のところ「ちゃんとした大人」なんているのか?皆そんなにちゃんとしていないけど、なんとかちゃんとしている風にみせているだけじゃないのか?フランシスは良くも悪くも正直者なのだ。
 フランシスは気は強いのに頼りないし、だらしないし、見ていて心配になるのだが、それでも応援したくなるのは彼女のその正直さ故かなと思った。何より、ものになるならないは別として、自分の好きなものからは逃げないところ。形はどうあれ、好きなままでいいじゃないかという気分になる。本作のラストはわりと楽観的というか、幾分ファンタジーではあると思う。が、経済面はともかく気持ちの上ではそんなにファンタジーじゃないんじゃないかな。リアルに寄せすぎるとシビアすぎて直視できなくなりかねないだろうし・・・と思っちゃうところが本作の限界なのかという気もするが。
 1人の女性のある時代の終わりを描いたようでいて、実はそうじゃないよなと思った。そもそも「時代」ってなんだ!フランシスはフランシスで別の人になったわけじゃない、ずっと続いているんだよなーと。彼女が走る姿はともすると大人げないが、大人が走ったっていいじゃないか。