皆川博子著
 『開かせていただき光栄です』の5年後、1775年を舞台にした続編。解剖医ダニエルの弟子であるアル達は、盲目の判事の力添えで、犯罪報道をする新聞を作っていた。ある日、オックスフォード郊外で「天使」と見間違えられた死体が発見され、身元確認の為新聞広告を出したいをいう依頼を受ける。死体の胸には「ベツレヘムの子よ、よみがえれ」という謎のメッセージが。アル達はダニエルと共に現場へ赴くが。前作の登場人物が引き続き登板しており、前作の「事件」の結末にも言及されているので、前作を読んでから本作を読む方が無難だろう。ミステリとしては、遺体に記されたメッセージはこれで有効なの?という気もしたが、過去の絡み方などスケール感あって面白い。また時代小説としても、イギリスの医療・科学の、他のヨーロッパ諸国からの立ち遅れ度合いなど、そりゃあダニエルももどかしいわ!と納得。他の18世紀イギリスを舞台とした小説や映画を見ても、そもそも手を洗う習慣が根付いていなかった、なんて描写もあったりするので、相当病原菌天国だったのだろう。それにしても文章といいキャラクター描写といい、若々しい。私は正直なところ、耽美・幻想寄りの皆川作品はあまり得意ではないのだが、本作は適度な軽さとユーモアがあって楽しく読んだ。