監督としてもめきめき頭角を現している女優のサラ・ポーリー。彼女は、自分が11歳の頃に病死した母親について、家族や両親の友人への取材を始めた。ポーリー家では「サラはパパに似ていない」という家族内での冗談が定着していたが、兄のふとした言葉から、本当に父の実子ではないのではという疑問が拭えなくなってくる。母の人生について話を聞くうち、彼女の秘密が明らかになっていく。
 サラ・ポーリーは自分の監督作だとここまで突っ込むのか!と言いたくなる、結構な冷徹さを発揮していると思うのだが、本作にも同じ精神を感じた。気心知れた家族相手だからこそ、聞きにくいことや気まずさもあると思うのだが、ユーモアを絶やさずどんどん掘っていく。それに応じる家族も器がでかいと思ったのだが、家族間の信頼関係がすごくしっかりとしているんだと思う。ポーリーが愛情を十分に受けて育ったことが垣間見られた。
 ポーリーが撮るのは、取材相手それぞれの「語り」であって、母の人生に関する客観的な証拠というわけではない。周囲が母の人生をどのように見ていたか、どう考えたかということなのだ。なので、母の姿も真実も、あらすじが概ね一致していても、ディティールは語る人によって少しずつ違ってくる。それを不満に思う語り手も当然いる。ただ、ポーリーにとって人の人生とはそういうものなのだろう。
 本作の、そしてポーリーにとってのキーパーソンとなる人物も登場するが、この人の「真実」、そしてポーリーの母の人生対する考え方は、いささかロマンチックすぎるように思った。自分が注いでいるほどの情熱を相手も持っているとなぜ信じられるのか。同じ風景を見ているとは限らないだろう。あなたの物語はあくまであなたの物語であり、私の物語はあくまで私の物語なのだ。多面的な見方があるからこそ、本作は面白い。