19歳の美容師見習い・マルク(ジャン=ピエール・レオ)は、カーレースに情熱を燃やしており、レースに出場するためのポルシェがどうしても欲しい。かつらの配達先で知り合った少女ミシェール(カトリーヌ・イザベル=デュポール)と一緒に、車を手に入れる為奔走するが。監督はイェジー・スコリモフスキ。1967年の作品。
 スコリモフスキはポーランドの人だが、本作の舞台はベルギー。主演のレオは『大人は判ってくれない』や『イルマ・ヴェップ』に出演するなど、ヌーヴェル・ヴァーグを代表する俳優だが、本作もヌーヴェル・ヴァーグの影響が色濃い。マルクの言動がやたらと騒がしいので、ドタバタ劇のようでもありパントマイムのようでもあるが、モノクロだとオシャレに見えるのはなぜだろう(笑)。
 題名は『出発』なのだが、マルクはなかなか出発しない。青春映画には「出発」する系のものと「出発」出来ない系(北野武監督『キッズ・リターン』みたいに)のものがあると思うのだが、本作も「出発」出来ない系だ。外的な理由で「出発」出来ないようでいて、実は彼の心が「出発」を拒んでいるように見えた。だって土壇場で「車の中に犬がいた」からって、どんなこじつけだよ!それで踏みとどまるならもっと早い段階で踏みとどまれよ(笑)!彼には今後、「出発」できるタイミングが来るのか、それともこのままなのか、気になってしまう。
 マルクもミシェールも可愛らしいのだが、マルクのミシェールへの接し方が雑かつ上から目線で、お前は何様だ!と。一見モテそうなのにそこはかとなく(どころではなく)童貞感が漂うところが、青春だな!って感じを強める。青春はキラキラしているが概ねみっともないし恥ずかしい。
 スコリモフスキの映画としては、かなり見やすい方だと思う。この人、基本的に初期の作品の方がとっつきやすくて、ある時期以降変態路線まっしぐらだな・・・。