トム・フランクリン&ベス・アン・フェンリイ著、伏見威蕃訳
1927年、ミシシッピ川が増水し、周囲の町には洪水が迫っていた。夫ジェシと共に密造酒を作っているディキシー・クレイは、赤ん坊を亡くした悲しみから立ち直れずにいた。一方、潜入捜査の為、相棒ハムと共に町へ向かっていた密造酒取締官インガソルは、銃撃戦から免れた赤ん坊を拾ってしまう。ディキシー・クレイが赤ん坊を亡くしたことを聞き、彼女に赤ん坊を託す。お互いの素性を知らない2人は、徐々に惹かれあっていくが。『ねじれた文字、ねじれた路』の著者フランクリンと、詩人としても活躍するフェンリイとの共作。このお2人、夫婦だそうだ。『ねじれた~』は男性2人が「もう一度やり直す」話だったが、本作は悲しみを抱えた男女が「もう一度やり直す」ことを試みる。ディキシー・クレイの強さ故の悲しみと、インガソルの寄る辺ない生き方をしてきたが故の悲しみのコントラストに陰影がある。激しい女と茫洋とした男(インガルスがブルーズを愛するのは、自分に欠けた濃い感情を補おうとしているようにも見える)、一見対照的なのだが、2人とも、ここが自分の居場所である、という確信を持てずに生きてきた(ディキシー・クレイの場合は確信を持てないというより、途中で見失ってしまったと言った方がいいが)人たちであり、だからこそ惹かれあう。1927年の大洪水は実際にあったことで、この時の災害対策でフーヴァーが株をあげたのだとか。禁酒法下であることも含め、時代背景の色濃さも面白い。