長年警察官として勤め、いい同僚同士だったシモン(ヴァンサン・ランドン)とフランク(ジル・ルルーシュ)。しかしある事件がきっかけでシモンは退職、警備会社に勤めていた。ある日、シモンの幼い息子がマフィアによる殺人現場を目撃してしまう。目撃者を消そうとするマフィアから息子を守る為、シモンはフランクの助けを借りて捨て身の戦いに赴く。監督・脚本はフレッド・カヴァイエ。
 渋いサスペンス映画を撮り続けているカヴァイエだが、本作は更に多くカーチェイスや格闘シーンを盛り込んだ、より派手なエンターテイメント。アクションのつるべ落とし状態で見所は多い。が、ハリウッドのようなエンターテイメントとしては洗練されきっておらず、格闘シーンに暴力衝動の生々しさが残っている感じがして面白い。冒頭、フランクと麻薬売人による車中での肉弾戦がまあすごい気迫なのだが、エンターテイメントの枠からなんとなくはみ出るものがあるような気がした。本当に痛そう、苦しそう、死にそうな感じがするのだ。シモンにしても、敵を倒すという目的からもちょっとはみ出した、暴力そのものへの指向が垣間見える気がして、シモンの元妻がどん引きしてしまうのにも、納得してしまう。
 息子を守りたい一心で無茶な行動に出るシモンを、フランクは職務違反を犯しつつも支える。2人の間には固い友情があるかのように見えるが、ここがもう一つの物語の軸になってくる。やりすぎでダサいなと思った題名も、最後まで見ると痛切さがしみる。ただ、ストーリーとしてこの部分ちょっと不自然だなとは思ったが。
 話の規模は、マフィアの抗争に巻き込まれた子供を守るという、そんなに大きなものではないのだが、内容のディティールが妙に盛られており、ごちゃごちゃした印象を受けた。状況説明セリフみたいなものはほぼない(そもそもセリフ自体が少ない)のだが、やたらとうるさく感じられるという不思議な味わいだった。