ミシェル・ウエルベック著、野崎歓
 アーティストのジェドは、道路地図を撮影した写真作品で一躍有名になる。静物写真からやがて肖像画へと方向転換したジェドは、作家のミシェル・ウエルベックに個展カタログ掲載向けの開設、そして絵のモデルを依頼する。ウェルベックは了承したが、思わぬ事件が起きる。どのように「売れる」のかというお金事情も垣間見える、現代美術を取り巻く世界を描く。企業や個人がいろいろと実名で登場するし、著者本人まで登場する(この人、オフィシャルイメージがこんな感じなのか?訳者あとがきを読むとそうみたいだけど、相当偏屈に見られてるってことなのか)。実在のものをフィクションにどんどん引きずりこんでくる強引さだが、固有名詞が使われている場所がぴたっとはまっている感じ。また、ジェドの青春小説としてもどこかせつなさが漂う。彼は友人や恋人がいなくはないが、常に孤独だし、自分から人との絆を深めようとはしない。彼は自分の「領土」を広げるが、そこに他人は入ってこないのだ。・・・というようにしんみりしていたら第三部でまさかの展開が。小説のジャンル変わっちゃったよ!それはありか!