元特殊部隊の兵士だったジョゼフ(ジェイソン・ステイサム)はある事件により軍事裁判にかけられたが遁走。ロンドンのホームレスとして身をひそめていた。彼はホームレス仲間の少女を気にかけていたが、彼女はある日拉致される。少女の行方を追って、他人に成りすましマフィアの用心棒をするようになったジョセフは、ホームレス支援をしているシスター・クリスティナ(アガタ・ブゼク)と知り合う。監督はスティーブン・ナイト。
 全くノーマークの作品だったが、監督のナイトが『イースタン・プロミス』『堕天使のパスポート』の脚本家で本作が長編監督デビュー作と知り、しかも主演はステイサム(この人は中堅規模の出演作の選び方が結構うまいと思う)なので頑張って初日に見に行った。いわゆる名作傑作の類ではないが、私の好みに合ったいい作品で満足。地味目でちょっとリリカル(笑)、かつ説明しすぎないハードボイルドが好きなのだ。舞台がロンドンというのもいい。更に100分という適切な長さ。
 題名(原題も同じ)は、ジョゼフが見るハチドリ(ハミングバード)の幻影から。ジョゼフは戦場での体験からおそらくPTSDにかかっており、幻影や幻聴に苦しむ。ハチドリは、彼の傷そのものでもある。ジョゼフは過去に深い傷や後悔を持つ。彼と惹かれあうクリスティナもまた(ジョゼフのものとは全く質が違うものだろうが)傷や後悔を持つ。2人とも、自分の過去に何らかの決着をつける為、「良きこと」をしようとしているように見える。そして、「良きこと」をする間だけはまともな人間でいようとしているようにも。ジョゼフがことを終えた後に町へ戻るのは、もう「まとも」でいる必要もなくなったからのようにも思えて、それがどこか悲しい。まともな自分を見せる為の相手がもういないということだから。
 ジョゼフとクリスティナは、(お互いに好意はあるのに)どこかちぐはぐでかみ合わない。2人は徐々に心を通わせていくが情感は抑え目に描かれている。こういう、情感が抑え目でお互い別の世界の人であるという男女の描き方は、スティーブン・ナイトの好みなのかな。2人のありかたが『イースタン・プロミス』に登場する男女とちょっと似通っていたように思った。
 ステイサムはアクション俳優というイメージが強いし、本作でも肉弾戦を十分に見せてくれるのだが、非常に抑えた演技、細やかな演技も実はちゃんとできるし、いい味わいを出す。本作ではゲイのBFになりすますシーンがちょっと茶目っ気あってチャーミングだった。