大森望編
国内随一のSF小説専門誌であるSFマガジンの創刊700号を記念したアンソロジーの、国内篇。筒井康隆の文庫未収録作品や、貴志裕介のデビュー作、そして手塚治虫、松本零士、吾妻ひでおという漫画勢まで、13作家の作品を収録。作風や年代に偏りがないように配慮されていると思う。漫画作品をちゃんと押さえているところも嬉しい。手塚治虫はやっぱりSFマインド満ち満ちだよな!とあらためて納得した。収録作の傾向はかなり多方向なので、えっこれもSF?と思うような作品(桜坂洋『さいたまチェーンソー少女』はSFがおまけみたいだよ・・・)もあったが、いろいろ味わえてお得感はある。個人的なお勧めは、80年代を思い出させる女の子の言葉づかいが懐かしいが、不思議と今読んでも古びていない鈴木いづみ『カラッポがいっぱいの世界』、『新世界より』への志向がうかがえる貴志裕介『夜の記憶』。あと大森望による作者紹介が所々余計なことをぶっ込んでいて吹き出しそうに(野尻抱介の近状とか・・・まあいいたくなるのはわかるが・・・)。