物理とSFを愛する青年シモン(ビル・スカルスガルド)はアスペルガー症候群で、両親は彼をもてあまし気味だった。兄のサム(マッティン・バルストレム)はシモンの良き理解者だったが、彼が原因で恋人に振られてしまう。シモンはサムを元気づけようと新しい恋人探しを始めた。自由奔放な女性イェニファー(セシリア・フォッシュ)と知り合い、サムと彼女の距離を近づけようとするが。監督はアンドレアス・エーマン。
 シモンはアスペルガー症候群という設定なのだが、毎日決まった予定に従い、予定外のことが起きるとパニックになる。想定外の事態、ルールから外れることがすごく苦手なのだ。このルールがかなり厳密なので、同棲していたサムの恋人は耐え切れずに出て行ってしまう。確かに、シモンの生活に合わせる(シモンが他の人の生活に合わせるのは難しいので)のは家族でも結構しんどそうだ。それが出来ているサムすごい!と思ってしまう。ただ、サムも我慢できなくなる時があって、弟を愛しているけどイライラしてしょうがないというジレンマがよく伝わる。
 アスペルガーの人にどういう傾向があるのか、ざっくりわかりやすく見せている作品でもあるのだろう。シモンは自分がアスペルガーだと理解している(物理が得意で頭はいい)し、外出時の対策として「アスペルガーなので触らないで」と書いたバッジを胸に着けたりもする。彼の言動は、アスペルガーを知らない人から見たら嫌な奴と思われそうだし、アスペルガーであることを頭で理解していても心ではイラつきそう(笑)。それを本気で嫌な奴ではなく、ぎりぎりユーモラスに見せるさじ加減がちょうどよかった。シモンは他人の心の機微には疎いが、機微がわからないわけではないし、彼なりの愛情や思いやりもある。人とはちょっと表出の仕方や理解の仕方が違うのだ。
 想定外が苦手なシモンが、自由人で想定外だらけのイェニファーと親しくなっていくというところが面白い。イェニファーはシモンが見ている世界を理解しているわけではないが、彼の行動にその都度合わせて(時には合わせずに)いく柔軟性と先入観のなさがある。彼女の気負いのなさ、てらいのなさがすごくいい。シモンの行動原理を理解しているサムの方が、自身でも言及するように、シモンを「こういう人」と思い込んで、変化できなくなっていたのかもしれない。アスペルガーに限らず、相手のことを決めつけたままではつまらないよなという、人間関係のミソみたいなものがあった。