高校生のユペール(グザヴィエ・ドラン)は母親(アンヌ・ドルヴァル)と2人暮らし。しかし母親にはいら立つばかりで、愛していないわけではないのについ言い合って罵倒してしまう。『わたしはロランス』が評判となったグザヴィエ・ドランの監督デビュー作(2009年)。本作では監督・脚本に加えて主演もこなしている。
 ユペールは学校へ行くのに母親に車で送ってもらうのだが、その車中でさっそく言い合いになる。彼のイラつきは、はたから見ると言いがかりにしか見えなかったりするのだが、その身勝手なイラつきがティーンエイジャーらしい。結局相手が何やっても癇に障るんだろうな(笑)。ユペールは母親に対する愛情はあり、自撮りのビデオ作品の中ではその思いを吐露したりもするのだが、実際に母親と相対すると、愛情ある態度を維持できない。素直じゃないというよりも、愛情をさえぎる感情が並行して存在しているという風だ。
 とは言っても、ユペールの母親も難点は多い。彼女はあまり愛情こまやかなタイプではないし、いわゆる「母親」的な振る舞いがあまり得意でなさそうなのだ。母親としての責任は果たそうとするが、基本、「私」としてしかふるまえない、ある意味すごく正直な人だ。息子も母親も我が強く非情に面倒くさい人なので、親子の組み合わせとしては相性が悪いとしか言いようがない。この母、この息子でなければ、もう少し穏やかに生きられたのかもしれない。
相性が悪いから愛がないというわけではない。愛さずにいられないのにお互いに憎らしい、だから苦しいという、ヒリヒリした感じが全編に満ちている。
 ドランは主演こなすだけあってルックスはいいし、華もある。本作といい『わたしはロランス』といい、「私が自分を愛するようにあなたも私を愛してほしい」という傾向が強いと思ったのだが、彼のルックスをみるとなんとなくその傾向にも納得してしまう。本作中、ユペールと恋人のシーンに妙に多幸感があったり、寄宿先であっさりイケメンと仲良くなったりするあたり、役得すぎだろ!と若干突っ込みたくもなるが。