ニック・ハーカウェイ著、黒原敏行訳
大量破壊兵器「逝ってよし爆弾」を使った「逝ってよし戦争」によって壊滅的なダメージを受けた世界。“ぼく”は親友のゴンゾーらとわずかに残った可住ゾーンで危機管理会社のスタッフとして働いている。可住ゾーンを維持する装置ジョーグマンド・パイプで火事がおき、その対応にかりだされるが、思わぬ困難が降りかかる。災害から一気に時間をさかのぼり、“ぼく”らの少年時代から青春時代へと、どんどん飛躍していくしその飛躍の中からまた脇道へ脇道へと脱線していく。しかも“ぼく”がやたらと饒舌。しかしその脇道がちゃんと本筋に必要なのだとわかっていく後半までたどり着くと、そういうことだったのかと軽いカタルシスがあった。ちょっと突飛に見えたり言葉づかいのノリが軽かったりするけど、スタンダードな冒険成長物語を愛してきた人が書いた作品だなぁという感じがする。加えて、カンフー映画とかコミックとか、著者が好きなものを全部突っ込んだ集大成でもあり、そこが微笑ましい。