J.D.サリンジャー著、村上春樹訳
名門大学の学生フラニーと、その兄で俳優のズーイ。フラニーは聡明ゆえに世界が欺瞞に満ちていることに耐えられず、自宅に引きこもる。ズーイは皮肉やで毒舌だが、フラニーを心配し彼女を助け出そうとする。サリンジャー作品はあまりに若々しくてナイーブで昔からどちらかというと苦手だったのだが、翻訳が違えばまた印象が変わるかなと思い、村上訳で読んでみた。あまり印象自体は変わらないけど(笑)、読みやすいことは読みやすい。また、今回改めて読んで、ここまで問答小説、そして宗教小説だったとはと目から鱗。フラニーの状態が拒食症プラス引きこもりだというのも今読んだ方がぴんとくる(当時はそういう認識ってあまり普及してなかったのかしら)。読む時代が変わるとまた新しく見えてくるものがある。ズーイは確かにフラニーを愛しているし彼女を手助けしようとしてはいるが、アプローチの仕方が斜めすぎて、これだったらやらない方がましだよ!お前がむしろ悪化させているわ!と突っ込みたくもなる。しかし、理屈をこねまわす彼の言葉が、徐々にストレートな思いやりが感じられるものに変化していく、本気でフラニーの為にしゃべっているのだと伝わってくる終盤はやはり迫ってくるものがあった。ただ、若いころに読むべき小説だなという感は否めない。この年になってから読むと、グラス家の母や兄たちの気持ちの方がわかるんだよね・・・。うちの子たち正論は正論だけど面倒臭いわ!って・・・。ズーイは母親を根っこでは愛しているがおおむね馬鹿にしているし、フラニーも母とはお互い理解がないけれど、このお母さん結構強いよな~。