1969年、ロンドン。売れない役者のウィズネイル(リチャード・E・グラント)と“僕”(ポール・マッギャン)は酒とドラッグに興じる自堕落な日々を送っていた。しかしこのままではだめだと思い、気分転換の為にウィズネイルの叔父モンティ(リチャード・グリフィス)が所有している田舎の別荘へ向かう。監督・脚本はブルース・ロビンソン。1987年の作品。
 ウィズネイルと“僕”はどうも同居しているらしいし友達と言えば友達なんだろうけど、お互いに思いやりを示すでもなし、信頼し合っているという風でもない。ウィズネイルは“僕”をだしにしてモンティから別荘を借り、酒や食料をせしめる。むしろ“僕”にとってウィズネイルは迷惑な存在でもある。実際、“僕”はウィズネイルに我慢できずつかみかかったりもする。
 しかし“僕”はウィズネイルとくっついている。自分でも何故だかわからないけど縁が切れない腐れ縁みたい。お互いが自分の一部、2人で1人の人間のような感じなのかもしれない。もっとも、“僕”の方はかろうじてオーディションを受けたり家賃を払おうとしたり、「社会」にかかわろうとしている。ウィズネイルは仕事が舞い込んでも自分には合わないと断ってしまう。多分、彼に「合う」仕事はないのだろう。ウィズネイルはずっとこのまま留まりたいのだ。最後、“僕”がウィズネイルと別れるシーンは、“僕”が自分の青年時代=ウィズネイルを過去においていくようにも見えた。
 ウィズネイルよりもさらに一歩踏み込んで世間に背を向けているのが、彼の叔父モンティだ(ゲイであることがかなりカリカチュアされているのが気になったが)。彼は優雅な隠遁生活とでもいうのか、完全に自分の世界に生き、この世に自分の居場所はないという諦念に至っている。しかしこの世に居場所がほしくないわけではないというところに哀感が漂う。この人も“僕”にとってはかなり迷惑な存在となるのだが、その背後には寂しさが見え隠れしてやるせない。