西村乾物店店主の平吉(柳家金語楼)には3人の娘がいた。長女の照子(草笛光子)は商売を切り盛りし、父親の反対を受けつつも電気技師の岡本と交際していた。次女の信子(根岸明美)はレビューガール、三女の妙子(団令子)は洋裁学校に通っている。ある日平吉は、友人に上手いこと乗せられ、区会議員選挙に出馬することになった。平吉は選挙への影響も考え、照子を区会議員の黒川も息子に嫁がせようとする。監督は『ゴジラ』で有名な本多猪四郎。1958年の作品。
 気はいいがちょっとそこつな親父と、しっかり者の長女、マイペースな次女、ちゃっかり者の三女というベタだが安定感ばっちり、王道のキャラクター配置による王道のホームコメディ(当時としてはラブコメ寄りなのかもしれないけど、今見るとあんまりラブ要素はない)。特に照子のジレンマ、鬱屈みたいなものには、「ザ・長女」感を感じてかわいくもありもどかしくもあり。
 照子は責任感が強く、父親思いなため、岡本と交際していると父にははっきり言えず、父親が期待している縁談をきっぱり断ることもできずにいる。妹に黒川との縁談は嫌だとこぼすくらいなら、最初からはっきり断っておけばいいのにと思うが、それを言えないところに時代を感じた。岡本に対しても自分の事情を告げずにそっと寄り添う(岡本は研究に夢中で彼女は放置されているんだが・・・)あたり、「古風な女性」といった感じだ。
 一方で、三女の妙子は、お金を貯めていずれは(今で言ったら)起業しようと計画している。この2人の結婚観、女性としての人生観は対照的だが、お互いを否定しているのではなく、照子は妙子側に行きたくもあるが思いきれない、といった感じのところ、時代と時代の過渡期だったのかなと思った。ちなみに次女の信子は一貫してマイペース、時に夢見がちで、こういう人はいつの時代もいるだろうな(笑)。