ドイツからオーストラリアに移住して、長年連れ添った夫に先立たれたマルガレーテ(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)。彼女はローマ法王に謁見してある心残りを果たす為、娘の反対を押し切り一人バチカンへ。詐欺師のロレンツォ(ジャンカルロ・ジャンニーニ)と出合った彼女は、とある事情で彼の甥が経営するドイツ料理店のシェフとして店の建て直しをすることに。一方娘のマリー(アネット・フィラー)もマルガレーテを心配してローマへ向かっていた。監督はトミー・ビガント。
 『バクダッド・カフェ』のマリアンネ・ゼーゲブレヒト久々の主演作ということで楽しみにしていたんだけど、作中のファンタジーの度合いが一定しておらず、いまひとつ乗れなかった。口当たりはいいが、中途半端でもったいない。作品内世界の構築がいまいちユルい。『バグダッド・カフェ』は一種のファンタジーの方向に振り切っているから成立していた(今見るとかなり古臭いけど)んだろうなぁ。監督もスタッフも全然別だから、主演女優が同じというだけで比べるのも変なんだけど。
  マリーの家庭の状況は、結構「あるある!」と言いたくなる感じのもの。幼い息子2人が母親よりもしっかりと現実認識しているのも愉快。マリーはちょっと度の過ぎた心配性で、子供たちがちょっといたずらしただけで大騒ぎするし、マルガレーテのことも一人では何もできないみたいに扱う。自分自身が飛行機に乗るのも不安でしょうがない。かなり具体的に描かれているだけに、彼女の不安の根っこがどこにあるのか後々言及されるのかしらと思っていたらあっさりスルー。マルガレーテの過去よりむしろこっちの方が気になったのに・・・。
何より、法王に会わなくてはいけない理由に、ちょっと無理があったように思う。マルガレーテは敬虔なカソリックなので法王を深く敬愛しているのはわかるのだが、その内容だったら普通に教会に行って懺悔すればよかったんじゃないかなー。
 ちなみに、マルガレーテが得意としているのは伝統的なバイエルン料理なのだが、作っている様子を見る限りではものすごく油っこそう。お肉もスイーツもほぼ油で揚げている感じで、見ているだけでもたれそうだった。