シオドア・スタージョン著、大村美根子訳
人生に絶望した女性は、15フィートもの高さの盆栽を育てている男性と出会う。彼は、「あなたの望みをかなえてあげよう。ただし、わたしなりのやりかたで」と言った。表題作『時間のかかる彫刻』を含む12篇の物語集。表題作では2人の人間がお互いに歩み寄り、寄り添おうとする瞬間を一風変わった形で描いているが、そのほかの作品も、人と人、主に男女の愛、ないしはその愛が成立しそこなう様を描いているものが多い。スタージョンはパートナーの変遷によって作風が変っているそうだが、この作品集が書かれた時期は、いいパートナーシップが築かれていたのかなという気も。皮肉っぽい「きみなんだ!」や痛切な「ジョリー、食い違う」など、すれ違う人の心のはかなさを感じさせるものも印象に残る。しかし圧巻だったのは、スランプの画家と中世ファンタジー世界の騎士とが入り混じっていく「ここに、そしてイーゼルに」。すごい力技かつ無駄に雄大で笑っちゃうのだが、2つの世界のリンクのさせ方が痛快。


時間のかかる彫刻 (創元SF文庫)
輝く断片 (河出文庫)