元FBI捜査官で、今は民間の調査会社に勤務するサラ(ブリット・マーリング)は、環境破壊を行う企業に過激な報復行為ことで知られる環境テロ組織「イースト」に潜入する。組織の一員として行動するうち、サラは彼らに親近感を抱くようになり、リーダーのベンジー(アレクサンダー・スカルスガルド)に惹かれていく。監督 はザル・バトマングリ。主演のマーリングは脚本・製作もかねている。
 スパイとして潜入するうちにその組織に感化されていく、というのはよくあるパターンだが、サラは組織の主張というよりも、個々のメンバーの生い立ちや抱える傷に対しても共感していく。そこに本作の優しさ、ナイーブさがあると思う。組織のメンバーが連帯感を強める為に行う「儀式」は、ちょっと宗教めいていて反感を覚えるが、それも彼らが自分たちの弱さを補完し、疑似家族としての絆を深めようとしているとすれば、理解できなくもない。サラもそういった行為に反感を抱くが、徐々にメンバーからも受け入れられていく。
 ただ、組織のメンバーも企業も、実は元々は同じ側にいる。メンバーの多くは富裕層の子息で、経済的には恵まれた環境で育った。それこそ資本主義の恩恵を受けてきたわけだ。しかし、そのルールの中で幸せになれない、ルールに同意できないと気付いてしまった。彼らが企業に対して報復行為を行うのは、信義や正義の為というよりも、自分たちの出自に対する復讐のように見えた。テロというよりも、パーソナルな行動のように思えた。組織が身体的な接触、コミュニケーションを重視するのも、実の家族の中で失敗してしまったことを、もう一度疑似家族の中でやり直しているようにも見える。サラの心情の変遷もまた、ある種の「親」から独立していく過程のようでもある。
 政治的な行為というよりもパーソナルな行為としてイーストの行動をとらえた部分は、テロリズムを見せるやりかたとして新鮮味があった。しかし同時に、自然保護運動としては、一番苦しんでいる人たち(環境汚染被害の当事者)に何か救いはあったんだろうかというむなしさが残った。途中、9.11が引き合いに出されていたが、テロリズムの非生産的な側面については作り手側は自覚的なのではと思う。
 面白い作品だが、ちょっとロマンチシズムが過ぎるというか、メロドラマっぽすぎるかなぁと思った。ラストも、そこまで説明、アフターフォローしなくてもいいよという気もした。サラの「やり方」がファンタジーすぎると思えたからかもしれない。一人でそこまでできるか?そんなに上手くいくか?と見る側に思わせてしまうのでは。


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