ローラン・ビネ著、高橋啓訳
ナチスのユダヤ人大量虐殺の中心人物であったラインハルト・ハイドリヒ。ヒムラーの右腕であった彼は「第三帝国で最も危険な男」と評判だった。彼を暗殺する為に、ロンドンに亡命したチェコ政府は、2人のパラシュート兵をハイドリヒが滞在しているプラハに送り込んだ。2人の兵士はプラハのレジスタンスと協力し暗殺計画を進める。作家の「僕」はこの歴史上の事件を本に纏めようと取材を進め、当時の状況に思いをはせる。登場する人々は皆実在の人物で、「僕」は事実に忠実に記述しようとする。が、個々の人物の内面に思いを馳せればそれはフィクションに接近する。自分が体験していない(いやしていてもか)事柄を「記述」した時点で、それは自分の手を通したフィクションになりうる。その狭間に迫った「小説」でもある。歴史をどこまで自分にひきつけて書くか、小説をどこまで自分のこととして書いていくかという試みが形になったクライマックスは圧巻。


HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)
神は死んだ (エクス・リブリス)