1976年のF1チャンピオンシップ。ニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)とジェームス・ハント(クリス・ヘムズワース)にとっては因縁の対決だった。ニュルブルクリンクでの第11戦は悪天候の中開催されたが、ラウダは大事故に遭い、前進に火傷を負う。奇跡的に42日後に復帰したラウダは、彼が不在の間にポイントを稼いだハントとチャンピオンシップを賭けて勝負に出る。ニキ・ラウダとジェームズ・ハント、実在の2人のF1ドライバーの戦いを描く。監督はロン・ハワード。
 ハワード監督の作品を見るのは久しぶりなのだが、やっぱり名匠と言われるだけのことはあるんだな・・・。とても面白かったし、とにかく手際が良くて感心した。省略していい部分の省略の仕方、時間の飛ばし方など思い切りがいいのだが、文脈はちゃんとわかる(ピーター・モーガンによる脚本も良いのだと思う。『フロスト×ニクソン』も面白かったもんなー)。妙な言い方だが、端折り方が抜群に上手い。何より、F1について殆ど知らない私でも、レース中の雰囲気や車輌、コースの状態等がなんとなくわかるように演出されている。最低限ここを見せればそれっぽくなる、という判断が的確なのだと思う。ここが下手だと、説明が冗長になったり、素人目にも嘘くさくなってしまったりするだろう。
 ランダとハントは、性格も嗜好も正反対。ラウダはメカニックとしても優秀で、生真面目な職人気質。ハントは天性のスターで派手好き、享楽的だ。当然2人はそりが合わない。しかし、レーサーとしての才能と情熱は共通している。その1点でのみ、彼らはお互いを理解しあい、ライバルとして認め合う。正に「強敵と書いて友と読む」的な少年漫画スピリッツに溢れていて、気分が盛り上がった。こいつがいるから、こいつに顔向けできるような自分でいたいから踏ん張れる、という感じの意地が双方にあるのだ。ある領域に達した人同士でないとわからない連帯感のようなものが流れている。
 物語の流れがそれこそレースのようにスピーディなのだが、その目まぐるしい中であっても、ラウダとハントがどういう人か、ちょっとした所で見えてくる。経営者の息子であるラウダは「自分に商売は向かない」と父親に反抗していたのに、自分でレース出場の為の資金を集めてくるくらい商才があるあたりは妙におかしかった。えっ商才あるじゃん!と突っ込みたくなる。一方、商売っ気はおろか金銭感覚がユルユルなハントが、それまでのチームが経営難に陥り、レーサーとして自分を売り込まざるを得なくなった時の押しの強さと、チームメイトからの評など、なるほどスターだ!と納得させられるものがあった(でもレースの前には毎回嘔吐しているところも人間らしい)。どちらも、プライベートで付き合うにはかなり難のある人だと思うのだが、それでも魅力的に見える。


「新世紀GPX サイバーフォーミュラ」BD ALL ROUNDS COLLECTION ~TV Period~ [Blu-ray]
capeta カペタ (1) (KCデラックス)