麻薬ルートの大規模な捜査をしている、ジャン警部(スン・ホンレイ)率いるチームは、運び屋たちを摘発して病院に収容した。その病院で、車でビルに突っ込み運び込まれた男、テンミン(ルイス・クー)を見かける。ジャン警部はテンミンは麻薬組織の関係者だと見抜き、減刑を条件に捜査極力を要請した。海運業者を装い、麻薬シンジケートの人間との面談にこぎつけるが。監督はジョニー・トー。
 息もつかせぬ面白さ!次々と出来事が起き、それがどんどん転がっていく疾走感に満ちている。特に伏線もひねりもない、シンプルな話なのに全く飽きない。こんなに無駄がなくて手際のいい監督だったっけ(ダラダラする作品のときは本当にダラダラするし・・・)・・・。熱量はすごくあるのだが、クールだ。登場人物が全員、激高していてるようでいて、頭のどこかはいつも冷えている、常に次の一手を考えているような人たちだからかもしれない。
 トー作品というと、男のロマン!ノワールの美学!というイメージがあったが、昨年公開された『奪命金』にしろ本作にしろ、ロマンチシズムとは程遠い。欲!金!執念!というドロドロして世知辛いものに満ち満ちている。美学もへったくれもなく、なんとしも目的を遂げようという人たちの姿がギラギラしている。ジャン警部はワーカホリックといっていいようなものだし(寝ない!休憩しない!)、テンミンは命がかかっているからもちろん必死だ。どちらも必死なのだが、ジャン警部は無表情、テンミンは時に感情が溢れ、対称的。演じたホンレイとクーがとてもよかった。追うものと追われるものが、最後の最後まで、ここまでやれば清清しいわ!という境地を見せてくれる。基本シリアスではあるのだが、妙におかしみのあるシーンがちょいちょいあるのもよかった。工場員がまさかの・・・!という展開ではおーそうでなくっちゃ!と気分が上がる。
 近距離銃撃戦とカーアクションが評判になっていたようだが、確かに、最近の映画ではなかなか見ないタイプの銃撃戦だった。地味といえば地味なのだが、泥にまみれている感があっていい。


奪命金 ≪特別版≫【Blu-ray】(2枚組:BD+DVD)
ザ・ミッション 非情の掟 [DVD]