幼少期にポリオにかかった後遺症で、首から下が麻痺し重度の呼吸障害も抱えているマーク(ジョン・ホークス)。それでもストレッチャーベッドで大学に通い、卒業後はライターとして執筆を続けていた。障害者のセックスライフを取材したマークは、自身も愛する女性とちゃんとセックスをしたいと願うようになり、障害者へのセックスサロゲート(代理人)をしているシェリル(ヘレン・ハント)と面談することに。監督はベン・リューイン。
 障害者のセックスというと、ともすると特別なものとして扱われそうだが、本作は普遍的な人と人との対話とセックスに関する物語として、フラットな接し方をしていると思う。直接的なセックスの描写があるからかR18+指定を受けているが、むしろ10代の若者に見て欲しいなというくらいなので、勿体無い。相手の心と体、自分の心と体と、体でも言葉でも真摯に向き合うことの大切さを感じられるのではないかと思う。シェリルが「セックスマニュアルとか(参考にならないので)読まないで!」と言うのには笑ってしまった。
 登場する人たちが皆、ちゃんとしている人たちなので、見ていてほっとする。それぞれが言葉をよく選んで話している感じがするのだ。文筆家かつ体が動かないマークにとって言葉は唯一のコミュニケーションツールであり武器だ。彼が言葉の使い方に敏感なのは当然だろう。使い方が鋭敏なだけでなく、常にユーモアをはらんでいる。
 マークの相談相手となる神父(ウィリアム・H・メイシー)の言葉がどれもいい。決して饒舌ではないのだが、誰かを揶揄するようなことはせず、マークの気持ちを掬い上げ、かつ上から目線にならない。失恋したマークに対してかける、世界ではいつも誰かが傷つけられてしまう(だったかな?)という言葉が心にしみた。軽すぎず、重すぎずなのだ。また、そんなに出番は多くないのだが、マークのヘルパー2人も、ちょっとした会話や身振りに人柄の良さと知性が感じられると思う。


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