ステファニー、ロバート、ショーン、カトリーナ4人子供達は、母カレン(シャーリー・ヘンダーソン)と暮らしている。父イアン(ジョン・シム)は刑務所に入っている。カレンは毎朝子供達を学校に送り、定期的にイアンとの面接に行く。月日は流れ、子供達は徐々に成長していく。監督はマイケル・ウィンターボトム。
 実際に兄弟な子役4人を使って、5年間、彼らの成長に合わせて撮影したそうだが、子供の演技が素晴らしく自然。あざとくならないぎりぎりのところだと思うのだが、寸止めできるのがウィンターボトム監督の腕なんだろう。ドキュメンタリータッチな部分と、非常にフィクショナルな部分との匙加減が上手い。音楽の使い方を控えめにして(人が動いている時にはあまり入れていない)、風景のみの映像でマイケル・ナイマンの音楽をぐわっと流してエモーショナルさを煽る。この使い方はあざとい!(「ひかりのまち」の時も思った)とは思ったけど、これがないとそっけなくなってしまうかも。メリハリがきいていたと思う。
 子供たちは皆生き生きとしているが、特に長男が成長するにつれ不機嫌になり、ぶすっと黙り込む、母親に対して素直ではない姿が、実に男の子らしくて、いらいらするレベル。自分の弟もこんな感じだったなーと思いだして、苦笑いしてしまった。それぞれがどういう性格で、今までどういう関係性があって、という部分は、具体的にはあまり説明されない。イアンが何をして刑務所に入っているのかもわからない(パブでの会話で「おかしな話で~」と話し出すシーンはあるのだが、そこでカットされている)。ずっと見ているうちに、会話や行動から部分的に、なんとなくこうだったんだろうとわかる程度だ。その情報の控えめさ、どこを出してどこを出さないかという部分の兼ね合いが上手いなと思った。ロバートが遊びに行ったまま帰宅しなかった時、「男の子なんだから大丈夫、そのうち帰ってくるわよ」と無頓着なイアンの母親に、「だから息子(イアン)があんなふうになるのよ」とそっと毒づくあたり、家族の背景が垣間見えて興味深い。おいおいロバートは5歳児だぞ!と私も突っ込みたくなったけど(笑)
 5年の間には、イアンとカレンの関係も変わってくる。イアンがカレンの浮気に怒るシーンがあるのだが、彼はカレンの大変さ(1人で働きながら子供4人を育てる)がどういうものか、頭ではわかっていても実感は出来ないんだろうなと思った。逆に、カレンはイアンが刑務所内でどういう思いでいるのか、彼が体験しているキツさはわからないだろう。2人は愛し合ってはいるのだが、お互いに理解できない部分が徐々に大きくなっていく。ラストシーンからは、それでも「家族」を維持しようという危うさと希望みたいなもの、両方が感じられた。
 風景がすごくよかった。カレンたちが住んでいるのはかなり田舎みたいで、ロンドンに出るのには朝の4時起きだったりするのだが、丘や林が広がっていて魅力的。寂しいと言えば寂しいが(天気も曇天模様が多い)、こういう土地をずっと歩いてみたくなる。カレンは自動車を持っておらず子供達共々実に良く歩くのだが、風景を見せる為に歩くシーンを増やしたのかなとも思った。車移動だと、あまり頼りなさみたいなものが出ない気がする。


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