特集上映「フランス映画の知られざる巨匠 モーリス・ピアラ」にて鑑賞。麻薬捜査担当の刑事マンジャン(ジェラール・ドパルデュー)は麻薬売買の容疑者ノリア(ソフィー・マルソー)の取調べをする。後日、仮釈放されたノリアと再開したマンジャンは、彼女に惹かれていく。カモーリス・ピアラ監督作品(1985年)。フランスでは動員数183万人越えで、ピアラ監督作としては最もヒットした。
 一見ぶっきらぼうでごつごつとした肌触り。情感は抑えられた、冷ややかな感触だ。警察とその周辺をとらえた群像劇という趣で、どの登場人物に対しても距離をとられており、親密な視線は感じられない。体温が低い作品だ。余計なセリフや状況説明を排しているのも一因か。『ヴァン・ゴッホ』もちょっとそういうところがあったが、ピアラ監督は登場人物に対して見ている側があまり共感できないように意図しているのかなとも思った。
 そもそも、刑事たちも犯罪者たちも、荒っぽく喰えない奴ばかりだ(むしろ警官の方が言動が下品だったりセクハラの嵐だったりする)。いわゆる善良な人間は登場しないし、皆どこかこすっからい。全員が腹の探りあい、パワーゲームをし続けているような緊張感が漂う。マンジャンの友人である弁護士にしても、クライアントは犯罪者ばかりで、マンジャンとは単純に友人とは言い切れない。ただ、パワーゲームといってもかなり雑で、あまり頭が良さそうではないところがご愛嬌なのだが。
 刑事のマンジャンにしても、決して清廉潔白というわけではなく、捜査のやり方も(会話から垣間見られる限りでは)かなり強引そうだ。酒癖・女癖も悪そう。そんな彼が、ノリアに対しては妙にセンチメンタルなことを言ったりする、また死んだ妻のことを今でも思っているらしいというのが面白い。対するノリアは、そういったセンチメンタルさや愛を持たない、どこまでも一人で進む人だということが、徐々にわかってくる。演じるドパルデューとマルソーがとてもいい。特にマンジャンは、ドパルデューが演じたのでなければ、もっと単純で面白みのないキャラクターになっていたと思う。ドパルデューの特徴的な顔と身体(妙に大きい!)によって愛嬌といやらしさが同時に出ていたと思う。


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