小杉健治著
麻美子の父親は10年前、家族を捨て失踪した。しかし麻美子と弟の伸吾には年に1度、誕生日に手紙が届いていた。結婚を控えていた麻美子だが、婚約者が死体で発見され、伸吾が容疑者として逮捕されてしまう。同じころ、刑事を殺した罪で刑務所に入っていた圭一は出所した。殺人の動機が自分でもわからない彼は、その刑事が探っていた、自分の兄が焼身自殺した事件を再び調べ始める。義姉に会おうとするが、彼女は姿を消していた。全く関連ないように見える2つの事件が並行して語られる。どこでどう繋がるのか、そこを確かめたいがために一気読みしてしまう(笑)。ただ、話が面白いのと小説として面白いのとはちょっと違うのね・・・と実感する作品でもあった。現代が舞台の話ではあるが人物造形(特に女性)が妙に古臭いのが特に気になった。どういう境遇になっても「父親」であること、家族であることをやめられない男たちの愛の深さも、この仕立て方ではいまひとつ迫って来ず。


父からの手紙 (光文社文庫)
絆 (集英社文庫)