デイヴィッド・ヒューソン著、ソーラン・スヴァイストロップ原作、山本やよい訳
19歳の少女ナナが無残な遺体となって発見された。コペンハーゲン警察のルンド刑事はスウェーデンへの引っ越しを控えながらも捜査を開始する。捜査線上にあがった容疑者はどれも決め手に欠け、捜査は難航していく。一方、コペンハーゲン市長選を控えた政治家ハートマンは、現市長ブレーマーと火花を散らしていた。ハートマンの周囲にも捜査の手が及ぶ。デンマークで大人気だったTVドラマ・第1シーズンのノベライズ作品。小説単体としてもきっちり仕上げてあるので、ドラマを見ていない私も十分に楽しめた。個々のキャラクター性がよく立ちあがっている所や、とにかく引きが強くて次の章が気になってしょうがないところは、連続ドラマっぽいなと思った。中心にあるのは少女殺害事件なのだが、個々の登場人物が抱える過去や事情、そして市長選を巡る陰謀などの様々な要素が、事件の真相を覆い隠し、捜査をかく乱させていく。そのもつれをルンドがどのように解きほぐしていき、同時に自身ももつれに巻き込まれていく様に引き込まれる。ルンドの事件にとりつかれたようなワーカホリック加減は、同僚や部下が気の毒になるくらい。他人の人生にのめりこみ、自分自身の生活からはどんどん遠のいていくとも言える彼女のパーソナリティも魅力・・・というとちょっと語弊があるのだが、彼女の周囲から理解されなくても一人で立ち向かっていく、事件への情熱が物語をひっぱっていく。


キリング〈1〉事件 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
THE KILLING/キリング DVD-BOXI