ハーラン・コーベン著、田口俊樹訳
元報道カメラマンのレイは、仕事帰りに何者かに襲われる。裕福な主婦メイガンは、10数年ぶりにかつての知り合いからの連絡を受け動揺していた。警察官ブルームは、2月18日に失踪した青年の捜索をするうち、17年前の同じ日にも男性の失踪事件が起きていることに気付く。3人の男女を中心に、ある事件の全体図が見えてくる。コーベン久々の邦訳新作(7年ぶりか?)だが、この人はやっぱり掴みの部分が上手い。本作だとメイガンの過去だったり、レイのトラウマだったりと、早い段階で読者の興味をぐっとひきつけて最後まで引っ張っていく。なので、後から考えると随分この人めんどくさいことやってるなーとか思っても、読んでる間は気にならないんだよね(笑)。段取りがいいし、作中で描かれる事件に似つかわしくない(笑)あっさりとした作風なので、ストレスかからず読める。悔恨という感情が作品の底辺に流れているにも関わらず、湿っぽくならないのがいい。それぞれの17年間があり色々なことが変わってしまう、ということを感じさせるが、それが悔恨というネガティブ方向ばかりにはいかず、17年の延長線上にこれからがある、というポジティブさが感じられる。コーベンの作品て、陰鬱な方向にいきすぎないバランスのよさが大体あるよな。一気読みの快感を味わいたい方はぜひ。


ステイ・クロース (ヴィレッジブックス)
イノセント上 (ランダムハウス講談社文庫)