ポルトガル内でも歴史的建造物が多く残り、ポルトガル発祥の地とも言われるギマランイス地区を舞台とした、4編から成るオムニバス映画。監督はアキ・カウリスマキ、ペドロ・コスタ、ビクトル・エリセ、マノエル・ド・オリヴェイラの4人。なかなかに強烈な個性の布陣だ。各編の感想は以下の通り。

『バーテンダー』
 アキ・カウリスマキ監督作。バーで働く男の1日を描く。ファーストショットから炸裂するカウリスマキ色。ブレない!全くブレないカウリスマキ節であった。場所がポルトガルだというだけで、やっていることは他の作品と同じだよ!相変わらず主人公はお金を持っていなさそうだし、料理はまずそうだし、店の雰囲気も侘しい。男がランチ客を獲得しようとする努力も、ちょっと方向とやり方が間違っている・・・。見ていてにやにやしてしまうほどのブレのなさ。青みを帯びた画面の中、時々添えられる赤の色が美しく映えていた。いつものカウリスマキの作風でありながら、ギマランイスの町の雰囲気が感じられる。

『スウィート・エクソシスト』
 ペドロ・コスタ監督作。移民労働者のヴェントゥーラ(ヴェントゥーラ)は、1974年のカーネーション革命に参加した兵士の亡霊(アントニオ・サントス)と出会う。カーネーション革命は、将校たちによる軍事クーデターでありながらほぼ無血革命であり、ヨーロッパで最も長い独裁体制を終わらせた。ポルトガルが題材となった企画だが、本作にはギマランイスと特定できる要素は殆どない。ぱっと見はどこでもいい場所が舞台だ(実際、ギマランイスでは撮影していないらしい)。ポルトガルとの関わりが察せられるのは亡霊(たち)の言葉からのみ。ヴェントゥーラが幽霊に全包囲されている感じが怖い。幽霊と特定できるのは兵士のみ(様々な人の声で喋るので生きた人間ではないと思われる)だが、その他の人々が幽霊ではないと断定することもできないのだ。生者と死者が混在している世界に思える。

『割れたガラス』
 ビクトル・エリセ監督作。かつてはヨーロッパ第2の大型紡績工場だったが、今は「割れたガラス工場」と呼ばれる工場の廃屋。その屋内で、かつてこの工場で働いていた人たちへのインタビューとカメラテストが行われている。人が語る、というだけで映画になることに唸る。ある時代、ある産業の終わりを感じずにはいられない。その流れに翻弄された人々の語りは、思い出を懐かしみながらも、労働現場の過酷さや雇用条件の悪さに言及し、過去を全て是としているわけではない。冷静ではあるが、苦味や恨みつらみも滲んでいる。出演している人たちの人間味を感じさせつつ、全体を眺める視線は冷静なものだ。最後にアコーディオン演奏を持ってくるのはちょっと卑怯だなぁ(笑)。

『征服者、征服さる』
 マノエル・ド・オリヴェイラ監督作品。バスツアーの観光客たちがぞろぞろとギマランイスを訪れる。ガイドツアーが話すのはギマランイスの起源であるアフォンソ1世のエピソード。名所めぐりの観光映画だが、団体観光客ってどこの土地でも何となく場違いなおかしさがあるものなんだろうか。ギマランイスは落ち着いた雰囲気なので余計に浮くのかもしれないけど。オリヴェイラ監督の「撮っただけ」感がじわじわ染みてくる。ツアーガイドが最後にダメ押しのようにオチを言うのも、ええ~、そこ言っちゃうの?!とびっくりした。普通はなんとなくにおわせる程度できれいに締めるんじゃないだろうか。自由だなぁ・・・。


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