E.C.R.ロラック著、藤村裕美訳
帰庁途中のマクドナルド主席警部は、深夜にひったくりから女性を助け、車は警視庁に置いたまま帰宅した。翌朝、車の後部座席に悪魔の衣装をまとった男の死体を発見する。捜査を始めると、警部の車の近くに駐車していた老オペラ歌手の車に、ナイフと「ファウストの劫罰」の楽譜が残されていたことがわかる。1938年の作品。著者はクリスティとならぶ人気を誇っていたそうだ。クリスティよりもクールで端正だなという印象。オーソドックスな本格ミステリで心が洗われる(笑)。謎解きもひとつづつ謎を処理していき、きっちり手順をふんでいて安心。当時の社交界って世界狭すぎないか?という気はしたが・・・。端正さを感じさせる一因は、探偵役のマクドナルド警部の、折り目正しい知的な紳士っぷりにもある。人情はあるが冷静で、自制心が強い主人公なので心穏やかに読むことができた。品のいい作品だと思う。



悪魔と警視庁 (創元推理文庫)

死のチェックメイト (海外ミステリGem Collection)