マックス・ブルックス著、浜野アキオ訳
中国で発生したと思しき謎の伝染病。感染した人は急死した後に、ゾンビとして蘇り、生きている人間を襲い始めた。ウイルスはあっという間に世界中に蔓延。人間が安心して暮らせる土地はなくなり、人口は激減、物資も枯渇した。人類はこの危機にいかに立ち向かうのか、それとも絶滅してしまうのか。「アウトブレイク」を生き延びた人たちへのインタビュー集という形式の小説。ゾンビ+パンデミックという私が苦手な要素の組み合わせなのだが、ブラッド・ピット主演で映画化されたものが案外面白かった(というか気楽に見られた)ので、小説にも挑戦。最初は、文体がコロコロ変わって(インタビューという体なので、話者によって話し方が違うから表現としては正しいんだけど)読みにくかったのだが、慣れてくるとなかなか楽しい。徐々に、世界のどこで何が起きて、という地図が頭の中で出来上がっていく。同時に、個人の視点での限界みたいなものも垣間見えて、作品世界内の見通しの悪さが息苦しくもあった。もっとも、予想していたよりも大分人類がしぶとい(笑)んでちょっとびっくりしたけど。原作読んでみると、映画の脚本は(原作ファンには色々言われていたみたいだけど)健闘していたんだなぁと思う。原作に忠実にすると、1本のストーリーとしてまとめようがないんだよね。原作の形式で映画化しようとするとソダーバーグの『コンテイジョン』みたいになるんだろうけど、まんまネタが被っちゃうしあれより上手くやるのは難しいだろうし。



WORLD WAR Z 上 (文春文庫)

WORLD WAR Z 下 (文春文庫)