アメリカ人のニール(ベン・アフレック)はシングルマザーのマリーナ(オリガ・キュリレンコ)と恋に落ちる。ニールはマリーナと共に帰国し、オクラホマの小さな町で暮らし始めるが、マリーナは町に馴染めず、ニールとの関係も変化していく。マリーナはクインターナ神父(ハビエル・バルデム)に悩みを打ち明けるが、神父もまた、自らの職務に疑問を抱いていた。監督はテレンス・マリック。
 『ツリー・オブ・ライフ』から(日本公開は)2年後という、(マリックにしては)やたらと早いスピードで公開された本作。今までの寡作っぷりは何だったんだよという気もするが、確かにささっと作りました風なざっくり感。映像の密度は『ツリー・オブ・ライフ』には遠く及ばない。が、手早く作ったことによる軽やかさ、気の置けなさみたいなものもあって、これはこれで悪くはないんじゃないかなと思う。何より(マリックにしては)短い!
 作品の雰囲気は『ツリー・オブ・ライフ』から引き継がれているが、映画の軸が弱い。あるカップルの心が離れていく家庭と、神父が自らの信仰に疑問を持ち苦しむという2本のエピソードにより構成されているが、どちらもなんだか中途半端でインパクトがない。また、2本のエピソードが有機的な絡まりを見せず、少々こじつけっぽく感じられた。「信じることが出来るのか」という葛藤が共通項になっているとはいえ、それぞれ別の映画でもいいのになぁと思ってしまった。
 パリやモン・サン・ミシェルでの映像が美しく、風景の中のマリーナはのびのびとして、いかにもヒロイン然としている。しかしその思い出が美しいからこそ、オクラホマでの生活は、マリーナには場違いに感じられるのだ。マリーナはどこか少女めいた女性で生活感が薄いということもあるだろうけど、何より彼女に染み付いた土地の記憶が、オクラホマを拒否するのではないかと思う。彼女の日常生活は、やはりフランスにあるのだ(ドレスコードが周囲とちょっとずれているところが面白かった)。ニールにとってはオクラホマでの暮らしが「生活」なのだから、ギャップが生じるのも当然だろう。こういう、身に染み付いた土地との馴染み感みたいなものは、パートナーへの愛ではどうにもならないものなのだと思う。そういう部分のギャップ、違和感は、非常にリアルに感じられた。


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