恋人ハル(細谷佳正)と大喧嘩をしたくるみ(日笠陽子)。しかし仲直りする間もなく、飛行機事故でハルを失ってしまう。くるみの祖父は、ハルそっくりのロボットをくるみの家に送る。ロボットのハルは、引きこもったくるみを支えようとするが。脚本はドラマで活躍する木皿泉。キャラクター原案は『アオハライド』等が人気の漫画家・咲坂伊緒。監督は牧原亮太郎。
 1クールのアニメを90分くらいのダイジェスト版にまとめたような、物足りなさ、言葉足らずさを感じた。本来ならもうちょっとゆっくりとした尺で作った方が効果的な物語だったと思うので、惜しい。ハルとくるみの関係の変化の仕方や、失ったものは戻らない、しかし残るものはあるというテーマには、時間が少々足りなかったと思う。ストーリー上、ある仕掛けがされているのだが、そのサプライズ感を強めるにも、もうちょっと時間が欲しかった。じわじわ進む方が向いている物語なのだ。木皿泉って中短編には向いていないのかもしれないなー。
 また、アニメの脚本とドラマの脚本とは、今まで作法にそんなに差異があるとは思っていなかったのだが、本作を見て、やっぱり違うのかもしれないなと思った。木皿泉脚本のドラマは、キャラクター造形とかセリフの抽象具合など、世界の箱庭感がちょっとアニメっぽいなと思っていたのだが、いざその脚本でアニメとなると、何かしつこい気がする。実写だと印象に残っていた言葉が、アニメだと上滑りしていたりする。アニメは実写よりも抽象化された表現だから、抽象に抽象を重ねると印象がぼやけるということだろうか。
 舞台は近未来の京都だが、京都である必然性はあまりない。私が京都の町並みにあまり馴染みがないからかもしれないが。祇園祭の描写などかなり作画的に力が入っているのだが、それが作品にとってプラスかというと何とも言えない。何をどうしたいのか、どう見せたいのかというのがいまひとつぴんとこない作品だった。