幼い少女を殺害した容疑者として清丸国秀(藤原竜也)が手配される中、財界の大物・蜷川(山崎努)が清丸を殺したら謝礼として10億円払うという新聞広告を出す。被害者は蜷川の孫だったのだ。身の危険を感じた清丸は福岡県警に出頭。警察は警備部SPの銘苅(大沢たかお)と白岩(松嶋菜々子)、捜査一課の奥村(岸谷五朗)と神箸(永山絢斗)、福岡県警の関谷(伊武雅刀)ら5人を派遣し、清丸を福岡から 警視庁へ移送させることに。しかし次々と賞金狙いの刺客が襲ってくる。原作は木内一裕の同名小説。監督は三池崇史。
司法のあり方に挑む硬派な作品、あるいは派手なアクション・爆発シーン満載のサスペンスかと思いきや、そうでもなかった。予告編でどーん使われていたトラック爆破シーンも、「まあこんなもんだろ」感が漂う。脚本も割りとユルく(そもそもこういう状況でわざわざ容疑者を移送するかなーとも思うし)、一応大作なのに大作っぽくない、いい意味でのいい加減さがある。変に気負われるよりも、このくらいスカスカしている方が見えていて気持ちがいいんだよなー(みっちり詰めるならマイケル・ベイレベルの火薬量使ってくれないとつまらん)。観客って現金なものだと思う。
 勢いに乗せてガーっとやっちゃおう!と言わんばかりの前半の展開はスピーディで飽きない。後半、正義を巡る問答が頻出するようになると、物語の流れが停滞し始めるのが勿体無い。「そんなクズを命をかけて守る必要があるのか?」と銘苅らが何度も問われるが、彼らが守っているのは清丸個人ではなく、彼を裁く司法そのものだ。清丸がクズであろうが、刑罰を受けても何も変わらなかろうが、それは関係ない。司法の側にいる警察官らにしてみれば、何をいまさら、な問いではないだろうか。また警察官たちのキャラクターに共感できるほどには心理面の掘り下げはないし、そもそも掘り下げる気はないのだろう。そんなにシリアスな問いを投げかける気は多分ないんだろうなー、むしろ娯楽に徹している気がする。
 大沢たかおはどちらかというと苦手な俳優なのだが、本作で初めて悪くないと思った。体を動かす役だといいのかな。そういえば松嶋も本作で初めていいなと思った。加齢感がほどよく出てきている気がする。