若き情報分析官マヤ(ジェシカ・チャステイン)がパキスタンのCIA基地に派遣されてくる。彼女らの任務はビンラディンの潜伏先を突き止めること・ビンラディンの連絡員と思われる男の情報を掴むが、なかなかその先に進めない。そんな中、CIA局員を狙った自爆テロが発生し、マヤの同僚も死亡。やがてマヤ自身も身元が割れて狙われるようになり、アメリカへ帰国せざるを得なくなる。監督はキャスリン・ビグロー。
 2011年5月1日、米ネイビーシールズがビンラディンの隠れ家を襲撃、殺害した。その際、隠れ家特定に大きく貢献したという実在の女性分析官を中心に、「当事者の証言に基づき」ドラマ化した作品。3時間近くの長尺だが、作中時間は実に8年間!3時間くらいどうってことない気がしてきました(笑)。ただ、長尺ではあるが見ている間は無駄な長さを感じない。意味のある長さだということはわかるし中だるみみたいなものもさほど気にならなかった。コンパクトだった『ハートロッカー』よりも、むしろメリハリはきいている気がする。
 「CIAというお仕事」という感じの映画だなーと思った。こういう感じで情報収集・選別するのかーとか、現場との連携はこういう形なのかーとか。また、テロとの戦いって基本負け戦(対処療法的で防止が困難)なのかなとか。こういう組織で働くってどういう感じなんだろうと思いながら見た。
 マヤの上司や他のオフィスワーカー局員を、日和見的と評する感想が散見されていて、ちょっと驚いた。そんなことはないと思う。彼らはきちんと仕事をしているし、十分熱心だろう。あのくらいのスタンスでないと職能集団として機能しないのではないだろうか。マヤが極端すぎなのだ。人員動かすには確固たる根拠が必要だし(特に人員の命がかかってるんだし)予算だって限られてるし拷問は国家組織として認めたらイカンだろー!別に自分の地位が心配だからとか使命感が薄いとか、そんなことじゃないと思う。マヤのプロジェクトへの取り組み方は、仕事じゃなくて使命とか強迫観念とか、そういうものに見えてくる。他の局員と比べると、マヤには仕事以外の部分が見えない。生活感がないのだ。服装にも食べ物にも無頓着な様子が印象的だった。また、ビンラディンの件が終われば次の案件が始まるのだろうが、ラストシーン、じゃあこの人この後どうするの?と思った。他の案件に取り組む姿が想像できないのだ。仕事、しかも最終的に人を殺すことになる仕事にそこまで自分をつぎ込むってどういう感じなんだろうと。