1981年、小学校を卒業した渡会悟(濱田岳)は、一生団地の中だけで生きていくと決意する。中学校には通わず、読書に筋トレに団地内パトロールといった日課を規則正しくこなしていく日々。3年後、悟は団地内のケーキ店に就職。団地に住む恋人も出来た。しかし小学校の同窓生たちは徐々に団地から去っていく。監督は中村義洋。原作は久保寺健彦の同名小説。
 悟が団地から出なくなったのは、ある事件がきっかけだ。作中でも言及されるように、確かにショックな事件だろうけどそこまでするのか、と思う面もある。しかし、苦しさへの相対し方、人生との戦い方、そして折り合いの付け方は人それぞれだ。他人から見たら滑稽に見えるかもしれないが、本人にとっては真剣な問題なのだ。
 悟の同級生はどんどん団地から出て行って、彼は最後の1人になってしまう。しかし、本当は1人ではなく、ずっと一緒に戦ってくれていた人がいた。悟が一歩を踏み出すきっかけもその人だったというのは、月並みではあるが、納得出来るしすごく説得力がある。結局そこかよ!という思う一方で、やっぱりそれしかないかもなとも思うのだ。ストーリーの表面上には人物はあまり出てこないのだが、そこもまた、そういう存在のあり方として腑に落ちる。
 悟の小学校卒業時から青年時代までを一貫して、濱田が演じる。この人にしか出来ないだろう。最早特殊俳優の域に入っている(にもかかわらず全然普通の人の役もできる!)貴重な人材だよなぁと実感した。脇役もいい。特に、悟にとって大きな存在となる2人の女の子を倉科カナと波留が演じていて、それぞれ「こういう子」という雰囲気がすごく出ていたと思う。何年かにわたっての話なので徐々に風貌、ファッションも変わっていくのだが、その調整も良く出来ていたと思う。また、大人になった悟が仲良くなる少女の父親役が田中圭なのだが、この人最近こういう役ばっかりやっている気がするな!嫌な感じの出し方が上手い!
 悟の人生の物語であると同時に、団地の歴史を追う物語でもある。大規模に造成されていた当時は、夢を託されていたんだなぁと。ただ、その「夢」にはまりきれない、団地のような場所では行き難い人も少なからずいたと思う。悟の隣に住む女の子には、そういう側面を感じた。
 中村監督の仕事の手堅さ、安定性の高さを改めて感じた。正直、私にとってはあまりツボではないしさほど気分が乗る物語でもないのだが、それでも面白く見られたのは、映画としての基礎力の高さがあったからだと思う。