森見登美彦著
小学校4年生の“ぼく”ことアオヤマ少年は郊外の街に住んでいる。ある日、街に突然ペンギンたちが現れた。“ぼく”はペンギンの出現に歯科医院のお姉さんが関係していると知り、不思議な現象を研究し始める。第31回日本SF大賞を受賞した作品。SFというよりもファンタジーに近い、が、“森”で起こる現象のシステムはやっぱりSFぽいのかなぁ。SFファンが本作をどのように読むか気にはなる。が、ジャンルがどうであれ、本作はすてきなジュブナイル小説であり、夏休み小説である。夏の朝、すごく朝早くに目が覚めてしまって、まだ静まり返っている街を散策する時のわくわく感を思い出した。何か、夏の匂いみたいなものに満ちている。世界の別の側面を垣間見るみたいな。世界を知っていく、という面では正しくジュブナイル。知的好奇心旺盛でやや理屈っぽい、「自分は自分」を確立しているアオヤマ少年は、スクールカースト底辺でたむろっていた文系少年少女にとっては夢を託せる子供なのかも。