月村了衛著
大量破壊兵器が衰退し、近接戦闘兵器として機甲兵装が台頭している近未来。日本警察は「龍機兵」と呼ばれる新型機を導入した警視庁特捜部を発足。龍機兵の搭乗員は外部から雇われた姿俊之ら、3人の傭兵だが、警察組織内ではよそ者として反感をかっていた。そんな折機甲兵装による立ても籠り事件が起き、特捜部はSATと激しく対立することに。近未来を舞台としたSF警察小説。シリーズ2作目から読み始め、めっぽう面白かったのでさかのぼって1作目を読んでみたが、ちゃんと1作目から面白かった。キャラクターの立て方など危なげがないのは流石。どうも各作、傭兵3人それぞれの過去の因縁に絡み、現在と過去を行き来する構成で統一しているみたいだ(傭兵は3人だからこの構成は3作で終わりかもしれないけど)。本作では姿の過去と現在の事件が呼応し、姿なりの職業倫理が垣間見える。本シリーズで描かれる犯罪の姿には、昨年末に公開された『007 スカイフォール』でMによって語られる「現在の敵」の姿を連想した。本作が発行されたのは2010年なのでスカイフォールよりも先だが、今、戦争の描き方を考えると、こういう形になってくるのかなと思った。なお本作、警察内の軋轢が苛烈。閉鎖的で同調圧力の強い組織特有のいや~な空気感を味わいたい方もぜひ。