私立探偵・阿久根(田宮二郎)は、モデルで妹分の典子とドライブ中、交通事故現場に遭遇する。大怪我している男を病院に運んだ阿久根だが、この頃から、彼の周囲を怪しい男たちがうろつくようになり、とうとう拉致されてしまう。彼らは阿久根が何かを隠し持っていると思っているようなのだ。監督は村山三男、原作は藤原審爾の小説。1967年作品。
 冒頭のシャワーシーンといい、ラストの水着姿といい、田宮二郎のアイドル映画か!と思わず突っ込むくらい、とにかく田宮がかっこいい。私にとって若い頃の田宮二郎は(見た作品が偏っているので)、いつもいい車に乗って女性を口説いて(ないしは口説かれて)銃を撃っているイメージなのだが、本作もそんな感じ。ただ、腕っ節が強いわりにはすぐに殴られて気絶したりする。このへんのうかつさ(笑)はフィリップ・マーロウ(だけじゃなくて昔のハードボイルド小説の探偵)あたりを彷彿とさせる。マーロウは本作の阿久根ほど女ったらしではないが。
 女優陣も、当時のファッションと相まって見ていて楽しい。特にファム・ファタール的女性を演じる江波杏子は、いかにも何か事情がありそうな色っぽさがあって魅力的。終盤のどっしりとした構え方などとてもよかった。溌剌とボーイッシュな典子と対称的だった。
 横浜のヨットハーバーが頻繁に出てくるのだが、キザなセリフといい派手な立ち回りといい、「あぶない刑事」のルーツを見た感があった(笑)。横浜のちょっと日本離れした雰囲気(実際、船便で海外から入国してくる人も多かったろうし)が、当時は特に際立って見えたのかなと思った。浮世離れしたドラマの舞台にしやすかったのだろう。