2012年もそこそこ映画を見た。そして今年は1~3月に名作が集中し上半期で1年のベストが決まってしまうのでは?というまさかの展開に。今年は、自分にとって後頭部を殴打されるような、がつんとくる作品が多かったように思う。自分が映画に求めるものが何なのか、という部分もなんとなくわかってきた気がする。

では、まずは洋画(アジア含む)編。

1:『ニーチェの馬』
 世界の終わりがじわじわ迫ってくる。普通だったらそんなに好きな映画ではないと思うのに、強烈な絵の力にねじ伏せられ目を離せない。世界の終わり系映画にありがちなナルシズムがないところが素晴らしい。

2:『果てなき路』
 一見ミステリ仕立てだが、映画を愛するもののなれの果て、映画との道行映画である。その潔さとエンドロール曲で泣いた。

3:『灼熱の魂』
 こんなに厳しく激しい人生を生きられるものか。「許す」行為について深く考えさせられた。

4:『別離』
 特殊条件下ルールを適用した本格ミステリにも似た組み立て方で、家族の心の機微が浮かび上がってくる。海外の映画を見ることは、異国の歴史文化を知ることにも繋がるんだなと改めて思った。

5:『ドライヴ』
 シンプルなストーリーに滑らかかつどこか懐かしい映像美。主人公の仁義のようなものにぐっとくる。他人のささやかな好意や善意が、自分にとっては人生を左右されるようなものということもある。

6:『J・エドガー』
 まさか本気でメロドラマだとは!他人の情報には敏感だが自分のことには疎かった男と、その愛。イーストウッドがこういう作品撮るとはなぁ・・・

7:『裏切りのサーカス』
 実に流暢。原作者絶賛も頷ける脚本と編集の素晴らしさ。ハードな世界なのになぜか「あの頃僕らは」的甘酸っぱ、せつなさも。音楽の使い方も冴えてた。

8:『思秋期』
 やりばのない悲しみや怒りが身に染みてくる。だが、希望がないわけではないのだ。人を救うのはやっぱり人だと思う。

9:『オレンジと太陽』
 世界を良くしていくのは、普通の人の善意や努力やプロ意識だと信じたい。原作と合わせて深く感銘を受けた。

10:『これは映画ではない』
 逆説的に映画は何かと考えさせられる、闘争心溢れる作品。

次点で『チキンとプラム』。映画の魔法を感じた。共感とかしなくても、映画の力が強い作品だとがつんとくる。




続いて邦画編。1位以外はわりと小粒だが、そこそこ良かったという印象。

1:『演劇1』『演劇2』
 2作に分かれているが実質1作なので合わせて1位に。平田オリザの怪物性が際立つが、それに肉薄していく相田監督も同じく怪物的であった。圧巻のドキュメンタリー。

2:『おおかみこどもの雨と雪』
 母親像に対する批判も多いと思う(私は違和感さほどなかったですが)が、アニメーション映画としての引力の強さに屈する。ファーストショットで涙が滲むなんて初めてですよ。

3:『桐島、部活やめるってよ』
 今年の日本映画ダークホース。監督も脚本家も、よくがんばった!いやもう、ほんと面白くてびっくりしました。

4:『かぞくのくに』
 地味だが見ると確実に心に爪痕を残される。あの国も、この国も、何なんだろうと。

5:『I'M FLASH!』
 豊田監督がやっと調子を取り戻してきて嬉しいです。主演の藤原にとっても新境地だったのでは。

6:『ポテチ』
 日本のエンターテイメント映画は本作を見習って時間短縮に励むように。こういうのでいいんだよ。

7:『アウトレイジ ビヨンド』
 悪い顔がいっぱいでとっても楽しかった。加瀬亮の小物演技が素晴らしい。

8:『夢売るふたり』
 どろっとした異物感を感じる作品だった。松たか子はいい女優だな~。

9:『北のカナリアたち』
 若手俳優たちの健闘に敬意を表して。あと、やっぱり風景がいい。

10:『アニメ師 杉井ギサブロー』
 いやーもうよくこんな(集客しなさそうな)作品公開してくれたなと・・・杉井の人柄の好ましさが伝わってくることはもちろん、アニメ史資料としても貴重。

次点で『ももへの手紙』『伏 鉄砲娘の捕物帖』。今年はアニメーション映画が好調で嬉しかった。