タチアナ・ド・ロネ著、高見浩訳
記者のジュリアはフランス人の夫と結婚し、長年パリに住んでいる。戦時中にパリで起きたユダヤ人迫害の実体を取材することになる。同時に、夫が祖母から相続したアパートを改築し、一家は引っ越すことになった。本作が映画化されたものを先に見ていたのだが、原作も良作。映画は原作に忠実だったのね。映画だと若干舌足らずな感じがした、ジュリアの妊娠を発端とする夫との関係の変化は、原作の方が丁寧に描かれており腑に落ちる。その国の過去に対して忘れっぽいのは日本のお家芸かと思っていたが、フランスもあまり変わらない。えっこんなにウェットなお国柄だったの?!とびっくりするところも。フランス国内でホロコーストがあったことは一般ではよく知られておらず、歴史の授業等で教えることもないようだ(本作中で、シラク大統領が始めて公式に記念式典に出席し発言したと言及されている)。ジュリアはフランスに暮らして長いが、夫の親族からはまだ「パリのアメリカ人」扱いされている。そういう立ち位置だからこそ、ユダヤ人迫害問題に切り込んでいけたのだろう。根っからのフランス人としてだったら、深く切り込んでいけたかどうか定かではない。それくらい傷が深い問題で、実際ジュリアの調査によって人生を変えられてしまう人もいる。過去を掘り返すことは、ジャーナリストとしては正しい、が、家族としてはどうなんだ、という当人の身の振り方の選択を迫るような行為になりかねない。自分が正しいと思っていることをどこまで信じ続けられるか、という難しさも感じた。