ラピュタ阿佐ヶ谷の「昭和の銀幕に輝くヒロイン第67弾」淡路恵子特集で鑑賞。久松静児監督、1962年の作品。喜劇駅前シリーズの第4弾。奥の温泉場に豪華な観光ホテルが建って以来、駅前の温泉街は客を取られてしまっていた。観光協会は対策理事会を開くが、極楽荘の主人・孫作(伴淳三郎)が時代に即した色っぽいサービスを主張する一方、福屋の主人・徳之助(森繁久彌)は実直なサービスが肝心と意見がぶつかりあう。そんな中、美容師の景子(淡島千景)を級友の恵美子(淡路恵子)が東京から訪ねて来る。夫と不仲だと言うのだ。恵美子は福屋に泊まることになるが。
 淡路恵子特集だったが、淡路の作品というよりも森繁久彌と伴淳三郎、そして観光協会事務局長・坂井次郎(フランキー堺)の作品という雰囲気。この当時のコメディっていろいろな意味でおおらかだったんだな~と実感する。さすがに今となっては笑いのテンポもギャグも様相が変わってしまってあまり笑えないのだが、来場していた年配のお客様たちはケラケラ笑っていた。あの当時を知っているから笑える、という時代性の強い作品のように思った。
 時代性という面では、当時の観光地(温泉街)の様子が垣間見えるのは楽しかった。駅前通りが土の道なのは特に違和感ないのだが、山に登るハイウェイが砂利道なのはカルチャーショックを受けた。あんなだったのかー!でも山頂のレストハウスはそこそこ立派で近代的なので、ちぐはぐ感があった。福屋も極楽荘も、現代の目線で見ると味がある趣の旅館(レトロ趣味の女子なんかはむしろ喜びそう)なのだが、当時は却って古臭く見えたんだろうか。また、当時、観光サービスというと男性を対象にするものだったのかなという部分が多々ある。コメディ映画を見に来る層が男性主体だったということかもしれないが。
 笑いあり、ロミオとジュリエット的ロマンスあり、親子の情愛ありと盛りだくさんでにぎやか。森繁っていい喜劇役者だったんだな~。私はシリアスな芝居をするようになってからの森繁しか知らなかったので新鮮だった。